ベルギービールを深く知る。【スタイル編】

いろんなビールを知る

前回の【歴史・特徴編】からご覧いただくとよりお楽しみいただけるかと思います。

ベルギービールはどれも個性豊かな味わいで、スタイル(種類)で分類することすら無意味とも言われています。しかしどんなスタイルがあるかをを知っておくことによって、ある程度の指標になり好みのビールも見つけやすくなるかもしれません。ということで今回はベルギービールのスタイルについて解説していきます!

スタイル名に黒色下線があるものはクリックするとスタイル図鑑に飛びます。より詳しく解説していますので良ければ併せてご覧ください。

これは抑えておきたい!5つのスタイル

1、ベルジャン・ホワイト

大麦麦芽に加えて、麦芽化していない小麦とオレンジピール、コリアンダーが入った白濁したビール。小麦由来の爽やかな酸味とオレンジピールの香り、コリアンダーのスパイシーな味わいが特徴。

ヴェデット・エクストラ・ホワイト
(デュベル・モルトガット醸造所)

デュベル・モルトガットは日本でも比較的手に入りやすいベルギービールです。ドン・キホーテや成城石井などにも売っていますよ!非常にすっきりとしていて飲みやすいTHE・ベルジャンホワイトです。


2、ランビック

強い酸味と独特な香りが特徴で、自然酵母という空気中に浮遊している野生酵母や微生物を麦汁(ビールの素になる液体)に取り込ませたのち、オーク樽に移して2〜3年以上発酵・熟成させる。
また大麦麦芽の他に麦芽化していない小麦を30%程使用し、ホップは2〜3年寝かせて酸化させたものを使う。
ベルギーの首都ブリュッセルとその近郊で造られたものだけが「ランビック」と呼ぶことを許され、それ以外のものはランビック・スタイルと呼び区別される。

ストレートランビック

ランビックの原種。かなり酸っぱい。


・グーズランビック

ストレート・ランビックと発酵を終えたばかりのランビックをブレンドし、瓶内二次発酵させたもの。酸味の強いシャンパンのような味わい。


ファロ

発酵の段階で氷砂糖や甘味料を加えたもの。甘味と酸味のバランスが良い。ビールというよりはシャンパンに近い味わい。

リンデマンス ファロ
(リンデマンス醸造所)


フルーツランビック

発酵の段階でフルーツを加え一緒に発酵させたもの。クリーク(サクランボ)、フランボワーズ(木苺)、ペシェ(モモ)など種類豊富。甘酸っぱく、アルコール度数も低めで飲みやすい。

リンデマンス ペシェ
(リンデマンス醸造所)

ランビックなら飲みやすいファロやフルーツランビックがオススメ!食前酒やお祝いの席にもぴったりの味わいです。ブリュッセルの南西に醸造所を構えるリンデマンスは、伝統的なランビックやフルーツランビックを製造しています。


3、ストロング・ゴールデンエール

ピルスナーのような淡い色をしているがアルコール度数は7.0~11.0%と高め。アルコール度数を高めるためには多くの麦芽を使用する必要があるが、比例してボディも重くなってしまうため麦芽の代わりにベルジャンキャンディーシュガーを使用したり、発酵度を高めてドライで軽い飲み口に仕上げている。

デュベル トリプルホップ
(デュベル・モルトガット醸造所)

アルコール度数9.5%!ザーツ、スティリアンゴールディング、シトラの3種類のホップが使われていています。シトラ由来の柑橘の香りに、ザーツ(花の香り)やスティリアンゴールディング(樹脂、白コショウ)も合わさり複雑な香り、味わいになっています。苦みはやや強めで後を引きますが、それが非常に心地よくスルスルと飲めてしまいます。


4、トラピスト・ビール/アビィ・ビール

トラピスト・ビールはトラピスト会修道院で造られているビールで、味わいは修道院によって異なり様々なスタイルのビールがある。 トラピスト会修道士の協会に認められたビールだけがボトルに認定ロゴを印刷することが許され、現在世界で9カ所のみ。そのうち5カ所がベルギーに存在する。

対してアビィ・ビールは修道院の製法やレシピを一般の醸造所が引き継いで醸造されたビールを指す。

トラピスト・ビール

シメイホワイト
(スクールモン修道院)

シメイはトラピスト・ビールの中で最初に市販されたビールです。このシメイホワイトはスタイルでいうと「トリプル」にあたります。(後述します。)

アルコール度数が8.0%と高めで、あんずのようなフルーティな香りにカラメルのような味わいが特徴です。しかし原料にスターチを使用しているため軽めの飲み心地。うっかりごくごく飲んでしまうと酔っぱらいます。(笑)

アビィ・ビール

ヘルケンロード シスター
(コーネリッセン醸造所)

ヘルケンロード修道院のレシピで造られた、ザーツホップ100%のゴールデンエールです。苦みはほとんどなく、ザーツの香りを存分に味わえるビールです。コクもあり飲みごたえ抜群。


5、セゾン

ベルギーのワロン地方が発祥のビールで、アルコール度数は低く、酵母由来の酸味やスパイシーな味わいが特徴。

「セゾン」とはフランス語で季節を意味し、夏季の農業中に水分補給のために飲む飲料として造られたと言われている。また閑散期の冬季はセゾンの醸造に充てていたそう。

僕ビール君ビール
(ヤッホーブルーイング)

日本でお手軽に買えるセゾンと言えばやはり「僕ビール君ビール」!ヤッホーブルーイングとローソンが共同開発したビールです。ローソンの他に成城石井でも見かけたことがあります。レモンやマスカット、ハーブを思わせる香りと爽やかな苦みが心地よいビールです。

さらに深みへ!4つのスタイル

1、オールド・ブラウン

フランダース・ブラウン、または単にブラウンビール/ブラウンエールとも呼ばれる。

東フランダース州(オースト・フランデレン)で造られる。古いビールに新しいビールをブレンドさせて瓶内二次発酵、長期熟成させる。ワインのような酸味とフルーティさがあり、複雑な味わい。その色味は赤褐色〜茶色。

※画像をクリックすると楽天の商品ページへ飛びます。
リーフマンス
(リーフマンス醸造所)

チェリーをベースに18ヶ月間熟成させた後、ストロベリー、ラズベリー、チェリー、ブルーベリー、ジュニパーベリーのフレッシュジュースをブレンドして造られたフレッシュな味わい。氷を浮かべれば「リーフマンス・オン・ザ・ロック」のできあがり♬


2、オールド・レッド

フランダース・レッド、または単にレッドビール/レッド・エールと呼ばれる。

西フランダース州(ヴェスト・フランデレン)で造られる。上面発酵させた後オーク樽で2年間程熟成させる場合もあり、木樽に付着しているタンニンやカラメルがビールの色や味わいに影響を与える。赤色の大麦麦芽を使用することにより、その色味は特徴的な赤色。さわやかな酸味とフルーティな味わい。

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ドゥシェス・ド・ブルゴーニュ
(ヴェルハーゲ醸造所)

オーク樽で18カ月間熟成したビールと、8カ月間熟成した若いビールをブレンドしたもので、ブラックチェリーやパッションフルーツのような複雑な香りがあります。香りから想像されるほどのすっぱさはなく、酸味と甘味のバランスがとてもよいビール。


3、ダブル

ホップの香りや苦みよりも麦芽由来の甘味が特徴で、ココアやドライフルーツのような香りを感じることができる。色味は主に茶~濃色。アルコール度数はやや高めの7.0%程度。

シメイレッド
(スクールモン修道院)

あんずのような香りに、麦芽とカラメルのような甘味のあるビールです。苦みはほとんどありません。少し高めの温度で飲む方が香りが立って美味しいです。アルコール度数が7.0%とやや高めなので、ゆっくりとリラックスタイムに飲むのにぴったりです。


4、トリプル/トリペル

バナナやクローブのようなフルーティでスパイシーな香りを持つ銘柄が多い。ホップ由来の香りはほとんど感じられないが、苦味はやや強め。アルコール度数は7.0~10.0%と高い。ボディを軽くするためベルジャンキャンディーシュガーを使用する場合がある。色味は主に黄金色。

ヘルケンロード ヴェスパー
(コーネリッセン醸造所)

ハチミツのような甘い香りに、麦芽の甘味とカカオのような強めな苦味が相まってコクのあるビールです。しかし恐らく瓶内二次発酵させていないため味わいは軽やか。アルコール度数は9.0%。筆者は成城石井で購入しました。

これぞベルギービールの真髄!

スペシャル・ビール

どのスタイルにも属さないベルギービールを指す。醸造される地域の風土と深く関わった個性的なビールが多く、小規模醸造所の大半がこの範疇に含まれる。

グーデンドラーク9000クアドルプル
(ヴァン・スティーンベルグ醸造所)

ボルドーワイン酵母を使用したアンバーエールで、瓶内二次発酵させています。洋梨を思わせるようなフルーティな香りで味わいは焦がしたカラメルのよう。麦芽は通常の4倍使用されており非常に濃くフルボディです。アルコール度数は10.5%。

テットゥ・ド・モール アンバー
(デュ・ボック醸造所)

副原料に小麦、オレンジピール、コリアンダー、リコリス、アニスが使用されています。花のような香りで味わいは麦芽やキャラメルを思わせる甘味があり、後味にリコリスとアニスを感じます。なんとも不思議な味わいですが、とてもクセになる美味しいビールです。アルコール度数は8.1%。

その他

1、ベルジャン・ピルスナー

日本の大手メーカーのピルスナーのように、麦芽のほかにコーンやスターチなどの副原料が使われるものが多く、苦味が少なくすっきりとした味わい。

ステラ・アルトワ
(アルトワ醸造所)

ベルギーのピルスナーといえばステラ・アルトワ!麦芽の甘味とホップの苦みのバランスがよく、きりっと冷やして飲みたいビール。後味は非常にドライでクリーンです。


2、ベルジャン・IPA

ベルギー酵母を使用したIPAで、発祥はアメリカとされ純粋なベルギービールではないものの人気のあるスタイル。ベルギー酵母はリンゴや梨、バブルガム、スモモのような香りを出し、スパイシーな風味も特徴。

ヴェデット・エクストラ・IPA 
(デュベル・モルトガット醸造所)

IPAにしては苦みは穏やかで飲みやすいです。爽やかさと苦味が調和しており後味はとてもさっぱり。花のような香りとパッションフルーツのような味わいで、後味にグレープフルーツや草っぽさを感じます。

おまけ!フランデレン地方とワロン地方

ベルギーは北部のフランデレン地方と、南部のワロン地方に分けられ、それぞれ話される言語が異なります。これはそこに住む人々の生活習慣や価値観などが違うことを意味し、それは造られるビールにも反映されています。

北部フランデレンではオランダ語、南部ワロン地方ではフランス語が話されます。またベルギーのほぼ中央に位置するブリュッセルでは両方の言語が話されます。

※こちらの地図は著者の手描きなので非常にアバウトです…!こんな感じ、くらいに思ってください。

味わいの傾向として、北部フランデレンではフルーティさや麦芽の香りを重要視し、南部ワロン地方ではセゾンビールのようにスパイシーさや口当たりの良さを大切にしていると言われています。なので数あるベルギービールを選ぶ際に、フランデレンのビールかワロンのビールであるかを確認してみるのも面白いですね。ラベルに書かれている商品名がオランダ語ならフランデレンビール、フランス語ならワロンビールです。ぜひ参考にしてみてください。

フランデレンの人々にはゲルマンの血が、ワロンの人々はラテンの血が濃く流れているそうです。これが味覚の嗜好に違いをもたらし、それがビールの味わいにも影響しているのかもしれません。

おわりに

いかがでしたでしょうか?みなさまに少しでもベルギービールに興味を持っていただけたら嬉しいです。今回ご紹介したビールを可能な限り文末にまとめましたので、興味あるビールがありましたらぜひご覧になってみてくださいね。ではまた!








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