以前の記事で、「キリンクラシックラガービール」と「サッポロラガービール」はどちらも熱処理ビールであると紹介しましたが、では商品名にも入っている【ラガービール】って一体なんでしょう?どっちも熱処理ビールってことはラガービールって熱処理ビールのこと?と思った方、実は日本の大手ビールメーカーが作るビールには上記の他に、もうひとつ商品名に「ラガー」が付くビールがあります。それは「キリンラガービール」です。そしてこのキリンラガービールは熱処理ビール…ではなく、生ビールなのです!(熱処理ビールと生ビールの違いはこちらの記事を参考にしてください。)
まとめると、
- キリンラガー:生
- キリンクラシックラガー:熱処理
- サッポロラガー:熱処理
となります。つまり「ラガービール」というのは、熱処理ビールを指す言葉でも生ビールを指す言葉でもないということがわかりますね。
ラガービール=下面発酵ビール
ビールは大きく分けて3つのグループに分類できるということは以前の記事にも書きましたが、復習すると【下面発酵ビール】、【上面発酵ビール】、【自然発酵ビール】の3グループです。そのうちの【自然発酵ビール】とは空気中の野生酵母や微生物を利用して発酵させたビールのことで、これは世界的に見てもとても珍しいビールです。(日本のクラフトビールメーカーの伊勢角屋麦酒は「ヒメホワイト」という自然発酵ビールを作っています。興味があれば是非!)つまり世界のビールのほとんどは【下面発酵ビール】か【上面発酵ビール】であり、さらに日本大手ビールメーカーが作っているビールのほとんどは【下面発酵ビール】です。
さて、下面発酵ビールと上面発酵ビールは実は他にも呼び方があります。それは「ラガービール」、「エールビール」です。ようやく話が見えてきましたね!つまり、【下面発酵ビール】=【ラガービール】【上面発酵ビール】=【エールビール】ということなのです。そしてこの【下面発酵ビール】【上面発酵ビール】【自然発酵ビール】はそれぞれ更に子細に種類分けすることができます。そのように細かく分けたビールの種類のことを【ビアスタイル】と呼び、ビアスタイルによってビールの味わいが異なりますので自分の好きなビールを見つける指標にもなります。
先に「日本大手ビールメーカーが作っているビールのほとんどは下面発酵ビール」と書きましたが、特に【ピルスナー】というスタイルが90%以上を占めます。つまり、日本のビールは大体がピルスナーということになりますね。このピルスナーは更に【ジャーマンピルスナー】や【ボヘミアンピルスナー】、【アメリカンピルスナー】などとスタイル分けすることができます。(詳しくは以前の記事をご参照ください。)
余談ですが、ヱビスビールはピルスナーではなく【ドルトムンダー】というスタイルの下面発酵ビールです。ドルトムンダーはドイツ発祥のスタイルで、ジャーマンピルスナー(ドイツ発祥のピルスナー)を参考に作られました。味わいは苦味が穏やかでマイルド。飲み屋さんでヱビスビールが出てきたら「ヱビスビールってドルトムンダーなんだぜ!」と仲間に話してみましょう。一目置かれること間違いなしです。
酵母の違い
さて本題に戻りまして、【下面発酵ビール(ラガービール)】と【上面発酵ビール(エールビール)】それぞれの違いはなんでしょうか?どちらにも「発酵」の文字が入っているから、発酵の仕方の違いかな?と思った方、鋭いです!下面発酵ビールは、発酵が進むにつれ酵母がタンクの底に沈んでいきます。そのような性質を持つ酵母を下面発酵酵母(ラガー酵母)といい、下面発酵酵母を使って醸造したビールを下面発酵ビール(ラガービール)と呼びます。対して上面発酵ビールは、発酵が進むと酵母がぷかぷかと浮かんできます。このような性質を持つ酵母を上面発酵酵母(エール酵母)といい、上面発酵酵母を使って醸造したビールは上面発酵ビール(エールビール)と呼ばれます。
それぞれの詳しい特徴は以下になります。
下面発酵ビール
- 発酵が進むにつれ酵母が沈んでいく
- スッキリしていて飲みやすい
- 低温(5〜10℃)で7〜10日発酵させる
- その後1ヶ月ほど熟成させて完成
上面発酵ビール
- 発酵が進むにつれ酵母が浮かんでくる
- フルーティで香りが豊か
- 常温(15〜20℃)で3〜4日発酵させる
- その後2週間ほど熟成させて完成
日本のエールビール
上面発酵ビール、つまりエールビールは日本ではまだあまり馴染みが少ないですが、近年では大手メーカーもエールビールの開発に力を入れています。たとえばキリンの「スプリングバレーJAPANエール<香>」、サッポロの「ヱビス プレミアムエール」、サントリーの「ザ・プレミアム・モルツ 香るエール」などがあります。エールビールにも子細なスタイル分けがありますが、それはまた別の機会にご紹介出来ればと思っています。
本日のまとめ
- 全てのビールは【下面発酵ビール】【上面発酵ビール】【自然発酵ビール】の3つに分けることが出来る
- 下面発酵ビールはラガービールともいい、発酵の際に酵母が沈む。味わいはすっきりしている
- 上面発酵ビールはエールビールともいい、発酵の際に酵母が浮かぶ。味わいはフルーティで香りが豊か
本日のペアリング
スプリングバレーJAPANエール<香>
- スタイル ペールエール
- 適温 10~13℃
- 推奨グラス チューリップ型
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サンマの塩焼き
このビールは上面発酵ビールの【ペールエール】というスタイルのビールで、ペールエールはホップの香りと苦味が特徴的なビールです。(詳しくは次回に。)スプリングバレーJAPANエール<香>に一部使用されている【MURAKAMI SEVEN(ムラカミセブン)】という名のホップは、キリンビールが開発した希少な日本産のホップでその香りは和柑橘、イチジク、マスカットといった他のホップでは類を見ない香りなのです。今回はこの和柑橘に注目し、サンマの塩焼きにスダチなどを絞ると更に美味しくなることから、それをムラカミセブンの香りで補おうということです。こういった「この料理にあれ足したらさらに美味しくなるよね」的なペアリング方法は有効で、例えば唐揚げに柑橘の香りが特徴の【アメリカンペールエール】なんかを合わせたりするのも最高です。また同味同士を合わせるペアリング方法もあり、今回のサンマの塩焼きの”わた”や焦げ目の苦味に、苦味が特徴のペールエールの組み合わせは中々悪くないのではと思います。是非試してみて下さい。
ではまた!
記事でも取り上げた伊勢角屋麦酒の「ヒメホワイト」も入った飲み比べセット!
ペアリングで提案したキリンスプリングバレーの飲み比べセット!
参考文献
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