イングリッシュペールエール/English Pale Ale

発祥はイングランドのバートン・アポン・トレント

ペールエールといえば柑橘が香るアメリカンペールエールが主流になっていますが、元祖ペールエールはイングリッシュペールエールです。発祥は18世紀イングランドの中心部「バートン・アポン・トレント」という街でした。実業家のヒュー・オルソップが1822年にティーポットの中で造ったのが始まりだなんて言われていますが、ティーポットってどういうことなんでしょうね。(笑)

とにかく、その当時のビールは全て濃色だったのに対しこのペールエールはそれよりも淡い(ペール)色をしていたためこの名前が付けられました。日本でよく飲まれるピルスナーと比べたらあまり淡色には感じませんが、ペールエール誕生前のイギリスでは濃い色のエールビールが主流でしたので、そう名付けられたのも納得ですね。

決め手は水質にあり!

ではなぜバートン・アポン・トレントのエールだけ淡色になったかというと、それはこの地の特殊な水質にありました。基本的に軟水にはピルスナーなどの下面発酵ビール、硬水にはペールエールなどの上面発酵ビールが適しています。そしてバートン・アポン・トレントの水質は硬水であり、しかも相当のマグネシウムやカルシウムが含まれている超・硬水なのです。(正確には”非常な硬水”と表現するそうです。)この水の硬度を表す単位をppmといい、この数値が高いほど硬い水ということになりますが件のバートン・アポン・トレントは330mmpに対し、少し南下したロンドンは94mmpの軟水となっています。ロンドンのようにイギリスのほとんどの地域は軟水であり、これがバートン・アポン・トレントだけがペールエールを醸造することが出来た主な理由です。

さらにはバートン・アポン・トレントの水には石膏由来の硫黄の香りが付与されており、この水で醸造することによって「バートン・スニッチ」と呼ばれる独特の香りが生まれたのだそうです。当時はなぜこの地で造るエールビールだけこのような現象が起こるのか分かっていませんでしたが、次第にそれが石膏に由来していると解明されると、水に石膏を溶かして水の硬度を調整する技術が開発されました。そしてバートンの名を取ってバートン化製法と呼ぶようになりますが、現在では単に軟水を硬水に硬度調整することをバートン化としています。この技術によりたくさんの地域でペールエールが造られるようになったのです。

著者お気に入りのイングリッシュ・ペールエール

HARVEST MOON Pale Ale

日本/舞浜
製造 HARVEST MOON(ハーヴェスト・ムーン)

ハーヴェスト・ムーンは、東京ディズニーリゾートのイクスピアリ内にあるクラフトビール醸造所です。開業はイクスピアリと同じ2000年ですが、国内外のコンペティションで受賞を重ねている実力派ブルワリー。日本にわずかしかいないビアテイスターの最高位資格「マスター・ビアジャッジ」の称号を持つビール職人が造り出すビールはどれも高品質です。そんなハーヴェスト・ムーンが造るペールエールはイングリッシュ・ペールエールというスタイルで、イギリス産のモルト、ホップを使用しているのが特徴です。ホップ由来のお花やハーブを思わせる香りにモルトの甘味やコクが合わさって、まるで高級な紅茶を飲んでいるかのように優雅な気持ちになれるビールです。お料理と一緒にいただくのも良いですが、著者は単品でゆっくり飲みたいビールかなあと思います。ハーヴェスト・ムーンの定番商品が詰まった飲み比べセットもありますので気になった方は是非お試しください。


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とりあえずのビールはもうおしまい。
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